2006年07月29日

唯唯諾諾

●58.唯唯諾諾(いいだくだく)

【意味】事のよしあしに関わらず、人の言うことに従うさま。「唯唯」は、かしこまって承諾するときの返事のことば。「諾諾」は、他人の言葉に逆らわずそのまま承諾するさま。「唯」は、かしこまって急いで答える返事で、相手に敬意を払う意味合いがある。「諾」は、やや間をおいてゆっくりと考えて答える返事。

【出典】『韓非子』(八姦編)
「此人主未命而唯唯,未使而諾諾,先意承旨,観貌察色,以先主心者也。」(此れ人主、未だ命ぜずして唯唯、未だ使わずして諾諾、意に先んじ旨<むね>を承<う>け、貌<かお>を観、色を察し、以て主の心に先んずるなり)から。
 『韓非子』の八姦は、臣下が主君の権力を侵害する8つの計略について論じ、その対処策を述べた編です。八姦とは、「同牀」「在旁」「父兄」「養殃」「民萌」「流行」「流行」「威強」のことで、それぞれはごく簡潔に述べられています。以下のような意味です。

・同牀(どうしょう)・・・主君の色欲につけこんで、寵愛する者を通じて主君を動かす。

・在旁(ざいぼう)・・・主君が寵愛する近臣に取り入って、それらを買収して機嫌をとり、主君の心を自分に都合のいいように誘導する。

・父兄(ふけい)・・・主君と親しい親類や大臣(これも君主の縁者が多い)に頼み込む。

・養殃(ようおう)・・・家臣が民の力で宮殿を飾り、また賦税を重くして女性を美しく装わせることで主君の歓心を買い、さらなる欲望を引き出そうとする。

・民萌(みんぼう)・・・家臣自らが下に利益を与えて大衆を味方につけて、主君を孤立させる。

・流行(りゅうこう)・・・家臣が国中の論者たちを買収して自らに有利な議論を流布させ、君主の心を動揺させる。

・威強(いきょう)・・・民萌の逆。私党を募って下に威力を示し、助勢する者には利益を与えるが、助勢しない者には必ず死が待っていると示すことで、大衆を震え上がらせて実権をつかむ。

・四方(しほう)・・・家臣自らが国庫を使い大国にとりいって、その外圧によって主君を動かす。

 上記の故事は、2番目の「在旁」から出ていて、意味は「主君がまだ何も命令してないのに『はい、はい』と言い、まだ何もさせていないのに『はい、はい』と言って、意志表示より先にその旨を理解し、顔色を見て、主君の心を先どりする」というもので、このような人物は、挙措を同じくするものだから、これらが買収されると、主君の心に影響を与えるとしています。

※参考
 司馬遷の『史記』には、「千人之諾諾、不如一士之諤諤」(千人の諾諾は、一士の諤諤に如かず)という一節があります。「権勢に従順な千人の部下がいたとしても、自らの信念を持って直言する一人の部下には及ばない」という意味です。

 もともと「唯」と「諾」は、上記のように微妙に意味合いが異なっていたのですが、「はいはい」と相手の意見に従う点で同じで、「唯唯諾諾」という表現にみられるように、やがて両者が一体となって用いられることが多くなりました。


 八姦は、主君の人心を捉える策をうまくまとめたものだと思います。また、このような類型は封建社会だから意味を持ったというだけでなく、今でも広く通じるものといえそうです。

posted by landmark at 01:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 四字熟語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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