2006年07月22日

暗中模索

●51.暗中模索(あんちゅうもさく)

【意味】暗闇の中で手探りで探すこと。転じて、手がかりのないまま、いろいろと試しにやってみることを表す。「模索」は、手探りで物を探すこと、状況が不明の中で方法を探究することを指す。現在は「暗中模索」と一般的だが、出典の表記にも見られるように、もとは「暗中『摸索』」である。

【出典】『隋唐嘉話(ずいとうかわ)』の以下の部分から。
 「許敬宗性軽傲、見人多忘之。或謂其不聡。曰『卿自難記、若遇何・劉・沈・謝、暗中摸索者亦可識之。』」より。

 唐の政治家だった許敬宗(きょけいそう)は、狡猾で冷酷無情な性格で女性の武則天(則天武后)を擁立し権勢を振るった人物ですが、文才に優れ、著作郎になり国史の編纂などを行うといった一面もありました。
 彼は、忘れっぽくて会った人の名前も忘れることが多かったでのですが、そのときに、ある人が「もし、何晏(かあん)、劉てい(「てい」は木+貞)、沈約(しんやく)、謝霊運(しゃれいうん)といった有名人に会ったら、暗い中を探ってでも見知ろうとするだろう」と言ったというのが上の原文の部分です。」

※参考
 松尾芭蕉の『奥のほそ道』の「象潟(きさかた)」の一節に
 「闇中に模索して「雨もまた奇なり」とせば、雨後の晴色またたのもしきと、蜑(あま)の苫屋に膝を入れて、雨の晴るるを待つ。」という部分があります。意味は、「暗やみの中を手さぐりするようにして見る雨中の夜景がこんなにも素晴らしいのだとすれば、さらに雨が上がったあとの景色はどんなにすばらしいだろうと期待をかけて、小さな漁師のあばら屋にわずかに膝を入れて、雨のあがるのを待つ。」というものです。蜑とは、漁師のことです。
 この一節は、唐の蘇軾(そしょく)の詩「飮湖上初晴後雨」の言を踏まえたものです。

水光瀲艶晴方好(艶はさんずいが要ります)
山色空濛雨亦奇
欲把西湖比西子
淡粧濃抹総相宜

水光 瀲艶(れんえん)として 晴れ方(まさ)に好し
山色 空濛(くうもう)として 雨も亦(ま)た奇なり
西湖を把(も)りて西子に比せんと欲すれば
淡粧濃抹総(す)べて相宜(よろ)し

水面にはさざ波のしきりに起って、晴れてちょうど良い
山の色がぼんやりと曇り、雨の景色もまた良いものだ
西湖を西施と比べようとするならば
薄化粧も濃い化粧も(晴れでも雨でも)、どちらもなかなか良いものだ

 ここで「雨亦奇」は上の一節の「雨もまた奇なり」という部分に、また雨の上がった景色は、「晴れ方に好し」という部分を意識したものと考えられます。


 暗中模索は、とても一般的な用語として使われています。1000年以上もの歴史を経て、なお使われているというのは、不思議なことでもあり、ドラマチックな感じもします。
posted by landmark at 01:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 四字熟語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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