2006年07月06日

阿諛便佞

●32.阿諛便佞(あゆべんねい)

【意味】口先で人に取り入り、ずるがしこく振舞うこと。「阿諛」は相手の気に入るようにおもねりへつらうこと「便佞」は、口先は巧みだが、心に誠実さのないことやそのような人を指す。

※類義語
阿諛追従、阿諛曲従、世辞追従

※参考
 森鴎外『興津弥五右衛門の遺書』に「主君御自身にてせり合はれ候はば、臣下として諫め止め申すべき儀なり、たとひ主君が強ひて本木を手に入れたく思召されんとも、それを遂げさせ申す事、阿諛便佞の所爲なるべしと申し候。」というくだりがある。
 珍しい伽羅の大木の本木(もとき)と末木(うらき)のうちの本木をめぐって弥五右衛門のいる細川藩と伊達藩とで値段の吊り上げ合戦になった。弥五右衛門とともに茶事に使う珍品を探せとの命を受けて派遣された横田清兵衛は、そんなもので大枚をはたくくらいなら、末木のほうでもいいのではないか、と主張したのに対し、弥五右衛門は本木のほうがいいに決まっているのだから、断じて引けない、負ければ伊達藩に屈し、家名を汚すことになるという。
 横田がこれを嘲って、それは力点が違う、そんなことに固執するのはおべっか者(阿諛便佞)のすることだ、と主張したのが上の言です。主君に珍品を買って来いと言われれば、最上のものを買うのが我が使命との立場を崩さない弥五右衛門は結局横田を殺害するに至るのですが…。

 阿諛便佞は以上ですが、先に類義語にあがった「世辞追従」の例を最近見つけました。「これで世間並みの世辞追従が云えると、今頃はもっと出世しているのですが、どうも馬鹿を見ると馬鹿と云いたくなるし、癪に障ると殴りたくなるし…」(山本周五郎「武道仮名暦」<酔いどれ次郎八・所収>)
 口が軽く、思ったことをすぐ口に出してしまうため、すぐに喧嘩に発展してしまう難のある戸来(へらい)伝八郎ですが、物事にこだわらない明るい闊達な性格で朋友からの敬愛も厚い人物。せっかちではあるものの、思慮深い一面があり、やるべきことはしっかりやり遂げるという不思議な人物です。
 山本周五郎の作品には、このような人物像が他にも何篇かに描かれています。個人的に周五郎は大好きな作家なので、機会があればまた例として引きたいと思います。

 今日は、「阿諛」ばかり紹介しました。でも、似たような表現が形を少し変えただけであるということはこのような側面がわたしたちに普遍的にそなわっているということかもしれません。
posted by landmark at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 四字熟語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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